この本を読んだきっかけ
お庭の土って、家を建てた後だから、掘り起こされてどこも同じようなものだと思われそうですが、場所によって結構違っていて、どんな植物を植えたらいいかを土質の面から考えることもあると思います。といっても、私の場合は粘土質か砂質かなど大まかな状態を知る程度なので、勉強するつもりでこの本を手に取ったんです。
特に黒土(黒ボク土)は、園芸の現場では「保肥力がないな〜」なんて言われることがあります。庭づくりでも、植物ごとの好む環境とか、植える場所の環境を考えて植えても、なんだかうまくいかないな、という時に、原因を探して庭中を観察するものの、はっきりとしない時に土が黒土だと、「黒土だからかな?」と疑ったことはないでしょうか・・。はい、私はあります・・。
本書の内容
本書に、一般的に黒ボク土は火山灰土と考えられてきた、とあるので、試みに一般的な園芸書を見てみると、
関東地方に広く分布する火山灰土(関東ローム)の表層土で、黒ボクとも言われます。有機物を多く含む軽くて柔らかい土です。保水性、保肥性はいいものの、通気性、排水性は良くないので、腐葉土などをたっぷり混ぜて使います。火山灰土の特質でリン酸分を吸着して離しにくいため、肥料としてリン酸を多く施す必要があります。(『ガーデニング上手になる土・肥料・鉢』より)
また、遠い昔、学生時代に学んだ土壌学の教科書でも、黒ボク土は「火山灰土」の項で説明されています。黒ボク土は火山灰と結び付けられて考えられてきた、というのがやはり一般的なようです。
筆者は、そもそも黒ボク土が火山灰土であることに疑問を持ちます。そこで問いを立て、検証していきます。内容が難解な部分もあるので、正直何度か「続きはまたにしよう・・・」と本棚に戻したこともあったけど、「黒ボク土って火山灰でしょ」という常識を、問いと検証という手順を追って覆していくのはとても読み応えがあったし、通説を疑うこと、これはひょっとしてとても勇気のある野心的な試みなのでは?と気がついた時、丁寧にデータを集め、そこからわかることを示していく、というあり方がとても勉強になりました。
では、黒ボク土ってなんなのか、最後の2章でやっと明かされます。黒ボク土が縄文時代に行われていたある文化の産物だということが示されています。
縄文時代・・・!?
黒土の見方が変わります。
黒ボク土と縄文文化
そういえば、最近読んだ『日本人なら知っておきたい! 万葉集 植物さんぽ図鑑』(文・木下武司 写真・亀田龍吉、世界文化社)という本の「すすき・をばな」のページに
ススキの語源は煤茎であり・・・
とあって、それはやはり同じ文化に由来する名前であるとありました。
万葉集が編まれた奈良時代は、縄文時代からだいぶ経っていますが、広大なススキ野原が目に浮かびます。
一面のススキ野原といえば・・・
とここで、この目に浮かぶススキ野原、見覚えがあります。箱根湿生花園で見た、仙石原の野原です。
調べてみると、縄文、万葉の頃と同じ方法で景観を保っているとのこと。
https://econavi.eic.or.jp/ecorepo/go/74
以前は、冬枯れの風景を見たくて訪れたのですが、ススキとともにどんな植物が育つのか、黒土を生かす植栽のヒントを探しに、また出かけてみようと思います。
箱根湿生花園、今年のオープンは3月16日から。
春が楽しみです。