『盆栽の誕生』依田徹著 大修館書店  —歴史を探って見える、盆栽の自由な可能性

節分が過ぎて、少しずつ日が延びてきたのを感じますね。

この寒さの中で花を咲かせる植物の中でも、

わたしが特に好きなのはロウバイです。

この花びらの透き通るような色・・!

満開になるとあたりに良い香りが漂います。春が待ち遠しいですね。

ロウバイ。Chimonanthus praecox。1月末から2月中に咲く花はとてもいい香り。

この季節のイベントで気になっているのが「国風盆栽展」です。

 

国風盆栽展・イベント | 【公式】一般社団法人 日本盆栽協会

 

2024年は前期が2月9日(金)から12日(月)、

後期が2月14日(水)から17日(土)まで。

 

盆栽の魅力

 

園芸店で、面白い枝ぶりのまだ小さな観葉植物を、焼き物の鉢に植えて、

盆栽のように仕立てているのを見かけました。

観葉植物なら室内もいいし、デスクに置けるサイズなので、

書類仕事の合間にグリーンを見てリラックスできそうです。

 

わたしが感じる盆栽の魅力は、眺めているひと時、

今いる場所を離れて大自然の中、木立や大樹を見上げているような

感覚になれるところです。

季節ごとの変化も魅力。育てて楽しまれている方も多いと思います。

 

本書の紹介

 

本書では、日本近代美術史が専門の著者が、

多くの資料を紹介しながら、盆栽の歴史を探っていきます。

個人の日記の中から、絵画から、有田焼の窯元に残る植木鉢の注文記録から

その姿と、植物に親しむ当時の人々の美意識を見出していきます。

そして、盆栽の誕生の過程には、意外な事実があることがわかります。

 

今も昔も変わらない、園芸の楽しみ

 

昔の人々が愛好した「鉢木」や「盆山」と呼ばれたものが

どんなものかは本書を読んでいただくとして、

著者が引用する多くの歴史的資料、特に日記は、昔の人も植物を育て、仕立てて、

その良さを味わい楽しんでいた様子に、今も昔も変わらない園芸の魅力を感じます。

例えば1466年、室町幕府の八代将軍・足利義政の側近

季瓊心蘂(きけいしんずい)の日記には、鎌倉公方足利政知)から

義政に献上された盆山を朝夕と眺め、

翌日には義政の庭師、善阿弥と共に眺めていたことが書かれています。

2人はどんな言葉を交わしていたのか、遠い過去がとても身近に感じられます。

 

読後に変わった「盆栽」のイメージ

 

盆栽と聞いてわたしの頭に浮かぶのは、古木の風格の松、という程度のイメージでしたが、

本書を読んで、もっと間口の広い、新しくて自由なものであることを知りました。

筆者は、

盆栽という文化の柱となっているのは「自然」の一語でないかと思う。

 

と述べています。「自然」という言葉に、皆さんはどんな風景を思い浮かべるでしょうか。

古木の風情、野山の草花、思い出の中の風景・・・

心のままに、鉢の中に再現できたら、楽しそうですね!