『園芸家12ヶ月』カレル・チャペック 小松太郎訳 中公文庫

最近の庭仕事    

日毎に日が短くなってきましたね。最近では、お昼を過ぎるともう夕方が近づいているように感じられます。

日が傾いてくると、グラス類の穂が、西陽を受けて輝いていてキレイ!草花の紅葉、草紅葉(くさもみじ)も楽しみです。わたしは特に、黄色く色づく草の葉が大好きです。

色づきはじめたAmsonia elliptica(チョウジソウ)。

 

『園芸12ヶ月』の中にも、草紅葉の美しい描写があります。

それから——。まだ葉が咲いている。秋の葉が。黄いろに、紫に、キツネいろに、オレンジに、緋赤に、暗褐色に。黒、青に色づいた実と、裸の枝の黄いろい、赤みがかった、ブロンドの幹。まだ、私たちは終わったのではない。(「11月の園芸家」)

 

文章から、秋の色があふれています。

本書の大部分は、思わずニヤリとしてしまう園芸家の姿が、ユーモアたっぷりに描かれていますが、その中に、こうした色彩豊かな自然の描写が随所にあって、植物の持つ美しさを発見した著者の、感嘆のためいきがきこえてくるようです。

何度も読みたくなる理由

この本の初版は1975年。初めて読んだのはだいぶ昔で、その後何度も読み返しては毎回クスリ、フフフと笑ったりしています。植物が好きすぎる人々の、情熱ゆえのあれこれが笑いを誘うのです。数年おきに読みたくなるのは、もちろん面白いからなのですが、季節の繊細な描写や、園芸の真髄と呼びたくなるようなことが、さりげなく、でもしっかりと書かれていて、この絶妙なバランスがわたしにとっては大きな魅力となっています。

筆者の園芸熱に火をつけた植物が意外

ところで筆者が園芸熱にかかったきっかけが、

自分でなにか花を一本植える

ことで、その植物は「マキギヌ」だった、という一節を読んで、「マキギヌ」が気になりました。

初めて聞く植物だったので、調べてみたところ、

多肉植物でした。ちょっと意外です。

本書に出てくる植物は、小さな花をたくさんつける可憐で愛らしい宿根草が多い印象だったもので・・・。

 

ちなみに、わたしの園芸熱に火をつけた植物はクレマチス・スタンスでした・・。この植物のふわふわした種をいただいたことがきっかけで、種子から苗を育てることをはじめました。

Clematis Stan’s(クサボタン)。

おわりに

本書には、筆者が、好きな植物を挙げるととめどない、といった勢いでたくさんの植物の名前がでてきます。例えばチャペック先生が度々その良さについて述べている、ロックガーデンの植物などを、本書から集めて図鑑で調べてみたら・・筆者の生きた19世紀末から20世紀初頭の、晩年過ごしたチェコの時代に少し触れられるかも、なんて考えています。